結論から言うと、研修費用の請求は難しいと思われます。
新入社員研修のような、会社側の必要によって従業員を対象として当然に行わなければならない研修の費用は、研修自体が業務の一環として扱われるためです。
従業員の退職のときに、研修費用の請求が可能であるかの判断は、労働基準法第16条の規定による賠償予定の禁止に違反していないかの点から、個別に行われます。研修の費用を会社側から負担することが当然であると考えられる業務命令であれば、研修後一定の期間を定め、その期間中に退職する場合は費用の返還させることは適切でないと判断される可能性があります。
過去の裁判例の中で、採用後講習を受け、それから7か月で退職した従業員に対して講習手数料の300,000円を請求したものがあります。この裁判では、「新入社員教育とさしたる差がなく、使用者として当然なすべき性質のものであるから、それに支出された研修費用の返還を求めることには合理性がなく、労働者の退職の自由を奪う性格を有するものであり労働基準法第16条に違反する」と言い渡されました。
まとめるとこの事例では、短期間で退職したこと自体は、労働契約の不履行に当てはまらず、詳しい損害の内容も明らかになりません。研修費用の請求も不可能で、従業員の退職の要求にも応じるしかありません。