期間を決めていない労働契約を締結している従業員は、自分が退職したい時にいつでも退職する権利を持っています。このことから、基本的に会社は退職届を受理する必要があります。これは事例のように、懲戒処分が決定されている従業員からの退職届でも同様です。
民法第627条第1項によると、退職届が出された日から2週間が過ぎれば、退職が成り立ちます。これに気を付けて、実際の退職日に関しては従業員の指定通りにせずに、合意で決めるようにしましょう。
この事例では、退職自体は受理しなければなりませんが、退職願で懲戒処分まで取り消されるものではありません。これを受け、退職金を支給しなくすることはできます。
しかし、これは就業規則などに退職金規定の中で不支給の要件が明らかになっていて、それに当てはまっていることが前提となっています。もし、就業規則に「懲戒解雇をされた人には退職金の支払いはないこととする」の項目だけがある時は、従業員が退職をすることで懲戒解雇にはならないわけだから、退職金の支給義務が生じます。過去の裁判例でも、「広麺商事事件‐1990.7.27‐広島地裁:会社の就業規則に、懲戒解雇された者には退職金を支給しないとの規定はあるが、懲戒解雇に相当する事由がある者には退職金を支給しないとの規定はない」のようにされています。
就業規則などの退職金規定に、「退職をしてから、在職中に懲戒解雇の事由に当てはまる事実を行ったら退職の支給をしないこととする。既に支給が完了されている場合は、返還をさせる」などの規定を入れ、不支給・退職請求が可能となります。