懲戒解雇の該当有無に関係なく、産前・産後休暇を取っている従業員に関しては、その休暇の期間中とそのあと30日間は解雇が不可能となっています。なお、法律から定められている期間を超過して休業しているときは解雇の制限がされていないことから、対象の従業員が産前6週間より前の時期であれば、解雇が認められる可能性があります。
労働基準法では、解雇ができない「解雇制限期間」を下記のように定められています。
(1)業務上の傷病で休業する期間とそのあとの30日間:仕事中に怪我を負い、その治療を目的として20日間の休暇を取っているときは、それからの30日間と足し合わせて合計50日間は解雇が不可能となっています。これは業務中の傷病によることであり、私傷病の場合は解雇制限がされません。
(2)産前産後休暇を取っている機関とそのあとの30日間:産前6週間と産後8週間、そしてそれからの30日間は解雇が制限されます。実際の出産が出産予定日より遅れたら、その期間中の休暇も解雇が制限されます。
この期間を超過して休業しているときの超過期間に関しては、解雇の制限がされません。なお、産前6週間の機関でも就労をしている期間と産後6週間が過ぎた後に就業しているときの就労から30日が過ぎた後は、解雇が制限されません。
解雇が制限される期間でも、例外があります。
(1)打切り補償を支給したとき:業務上の傷病で労働者が休業をし、治療が始まってから3年が過ぎても治らず、平均賃金の1200日分の支払いがされた時です。
(2)天災事変などで事業自体を引き続けることができなくなったとき:火事や地震などで会社が焼失されるなど、やむを得ない事由が発生して事業を引き続けることができなくなったとき、労働基準監督署長の認定で、解雇制限を解除してもらえます。
解雇制限期間中は、事例のように懲戒解雇にあたる行為が見つかったとしても、整理解雇を行う場合でも、解雇は認められません。
しかし、解雇の予告は制限されていないことから、懲戒解雇に該当する事由が見つかったら、解雇制限期間が過ぎた日を退職日にして解雇の予告をすることとなります。解雇の有効性は、普通解雇と同様、社会通念上の正当性及び客観的な合理性から判断されます。