背側転換は、会社の人事権を行使することが可能で、従業員の個別の同意が必要な事項ではありません。大概の場合、就業規則などにも「会社は従業員に配置転換を命じることがある」などの項目が含まれており、正当な理由を提示せず、業務の命令に従わない従業員に対しては懲戒処分を下すことはできます。
しかし、正当な理由がある場合は、権利濫用として解雇の処分は無効となります。ここで正当な理由とは、労働者が常に甘受できる程度を超過する大幅な不利益が発生したり、不当な目的・動機で命じた場合、業務上から必要とされていない場合などになります。
もし、転勤に従わない事由が「解雇を必要とする家族との同居」などである場合は、育児・解雇休業法26条の「子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない」に基づいて、解雇の処分が無効になる可能性があります。しかしこの「配慮」には、配置転換を命じないことだけでなく、下記のように例えられています。(2002年厚生労働省告示第13号 第2-13)
1.労働者本人の意向を斟酌すること
2.子の養育又は家族の介護の状況を把握すること
3.配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをした場合の子の養育・家族の介護の代替手段の有無の確認を行うこと