就業規則は、退職した後の従業員までは摘要ができません。労働契約の中に入っているときも、その労働契約の解約と同時に効力が失われます。このことから、別枠で秘密保持契約を締結することがポイントとなります。この契約の不履行として、損害賠償の要求ができます。
もし、在職中に退職してからの秘密保持に対しても規定を置いた秘密保持契約を対象者それぞれに締結しているときは、退職時にまた締結しなおさなくてもかまいません。しかし、心理的な抑止効果を生じさせるためには、改めて秘密保持契約を締結した方が望ましいと思われます。
退職をするときにこの秘密保持契約の締結を拒む従業員が出る場合に備え、就業規則などに秘密星契約締結を拒否したときには、退職金の減額を行うなどの規定を置くこともいいでしょう。退職の不支給や減額は妥当な理由でなければ認められにくいですが、このような規定を置くと重要ルールであると従業員に認識させることになります。
なお、退職時に秘密保持契約の締結がなかったとしても、不正競争防止法上の営業秘密の要件に当てはまれば、損害賠償や信用回復の請求、差し止めが可能です。このための要件は、下記の3つになります。
(1)秘密として扱われ、管理されていること
(2)公然と広く知られていないもの
(3)営業上・技術上の有用な情報
常に秘密として管理し、客観的から見ても秘密であるという認識をさせることが可能な状況を構築しておくことが重要です。このような秘密が不正に利用された時は、損害賠償などの請求も可能です。
企業秘密は常に管理をきちんとし、従業員が安易に漏えいしたり持ち出したりしないように指導・教育をしておくことが望ましいです。