従業員の都合による退職は、それが本人の意思であれば、その意思の示し方の手段と形式は、法令上から定められていません。口頭はもちろん、ファックスやメールでも問題の発生余地はありません。
ただし、メールは本人から送られてきたのかの確認が難しく、受け取った側からメールの文章に対して加工などを施すことも可能で、悪意を持つ第3社がなりすまして退職のメールを送る可能性もあります。また、法律上では意思表明の効力は相手側に到達してから発生するものであり、メールは「確認した」「確認していない」のトラブルが生じやすいです。
このことから、退職届は書面で提出してもらうのが一番です。
なお、従業員本人の都合による退職であるはずが、退職後に「解雇された」と主張してトラブルが生じる場合もあります。そのとき、退職の意思表明を明確にするものが立証として重要になります。
メールで受け取った場合、対象の従業員に書面の退職届を別に書いてもらうように交渉することが重要です。事前に就業規則に「会社に書面による退職届を提出する」などと定めておけば、従業員はこれに従うことが要求されます。
最後に、退職がほかの従業員に与える影響などを考慮し、対象従業員と早めに相談をするように協力・指導を呼びかけることも大事です。