賃金には「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づいて、従業員が業務に従事していない期間に対し、給与の控除は可能です。この原則は、例えば従事していない時間が5分であれば、5分に当たる給与のカットができるものです。
この事例の場合、3時間未満の遅刻が2回であるということは、最大6時間という計算が出来ます。欠勤はその日の全てを就労していないということなので、一日の就労時間が6時間以上であると定めている場合、6時間未満の欠勤時間を6時間以上の欠勤と同様の扱いにすることは違法になります。しかし、行政解釈では、「このような取り扱いを就業規則に定める減給制裁として、法第91条の制限内で行う場合は、全額払いの原則に反しない」ともされています。労働基準法第91条に定められている上限は、「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えないこと」になります。
今回の就業規則の定めは、労働基準法の制限も超えているので、無効になっていまいます。平均賃金は、常の勤務日に支給される1日分の給与よりも低額になるためです。
直接に給与に反映するのではなく、人事考課に反映して賞与をカットするという方法や欠勤1回になる遅刻の回数を増やすなどの方法を使って、就業規則を改めなければなりません。
*ノーワーク・ノーペイの原則
労働者が労務を提供しない場合、給与支給の義務がなくなり、労働者も給与の請求の権利もなくなるという考え方です。
従業員が欠勤や相対、遅刻をしたら、その時間に当たる給与のカットは違法ではありません。しかし、欠勤控除や遅刻控除を行うためには、日給月給制を採択していることが前提です。完全月給制を採択している場合は、労働時間数や労働日数などに関係なく、月単位で給与がを決まっているので、遅刻などの不就労時間の控除はしないことになっています。
なお、労働者の責任ではない交通スト、交通事故、天災事変などで出勤が不可能となった時に関しても、使用者の責任になる事由がないと扱われ、ノーワーク・ノーペイの原則の適用対象になります。
しかし、交通ストなどの時に会社が賃金を保証するという内容の規定がある場合、賃金支給の義務が発生します。