使用者から解雇の撤回をした時や、裁判で解雇の効力を失ったときは、その解雇はなかったものとみなされます。
解雇を撤回するまでの間に従業員が業務に重視できなかったフランク期間がある場合、その分の給料の支払いも必要となります。解雇を裁判で長期にわたり争うケースがありますが、解雇の効力がなくなれば、会社はその期間中の給与を支払わなければならなくなります。
この場合、支払わなければならない賃金は下記のような2つの考え方をとります。
1.休業手当の考え方:休業手当に対して労働基準法からの規定があり、使用者の責任になる自由で従業員の就労ができなくなった場合、平均賃金の6割以上の支払いが必要となります。
2.民法の考え方:民法第536条2項によると、「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない」こととなっています。
解雇の事由が使用者側にある場合、従業員は解雇がされなかったら貰えただろう賃金に関する権利があるということです。この考え方に従えば、賃金の全額の支払いが必要となります。
この事例では、解雇が効力を失われないかに関しても確かではありません。解雇は社会通念性・客観的な妥当性から判断され、個別の事情を踏まえて詳しく考慮されるものです。この判断で解雇が無効となった場合、解雇が撤回されるまでの期間に対する給料の支払いが必要です。
※解雇の期間中に従業員側に収入があった場合は、民法第536条2項で「自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない」となっています。これは、その就労が免除されていたことで他の会社から収入を得ることができた場合、その他の会社からの収入は後からの賃金から差し引かれることになるというわけです。しかし、平均給与の6割の支払いは必要なので、差し引かれる最大限度額は4割までとなります。
過去の裁判例(いずみ福祉会保母配転・解雇上告事件/2008年3月28日/最高裁)でも、「債務を免れた利益としてこれを償還すべきだが、平均賃金の6割までの部分については償還の対象とすることは許されない」ことになっています。