退職金の支払いは必ずしも必要とされるものではありません。これに制限を与えるのが他ならぬ職業規則で、就業規則などで支給条件が明らかになっている時は、退職金の支払いの義務が生じます。同様に、退職金の不支給とする条件も決めておく必要があります。
しかし、退職金には賃金の後払いという意味もあるため、就業規則などの定めがあるからと言って、懲戒解雇による退職金不支給がすぐ可能となるわけではありません。
このようなケースに関して過去の判例によると(橋元運輪事件:1972年4月28日名古屋地裁)、退職金の全額不支給を認めた場合は「労働者に長年勤続の功を相殺させてしまうほどの不信があった時」に限られています。
損害の度合いと懲戒解雇の事由、会社への貢献度などを勘案し、どれほど減額を行うかを決めることが望ましいです。この場合、就業規則にはっきりと示されていない限り、退職金の支払いは避けられません。