賞与は、通常の給与とは違って、支払いが義務付けられているものではありません。ただし、賃金規定や就業規則で賞与の支払いに対して明らかにされていたら、支払いの義務が発生します。賞与の支払いの有無とその方式は会社の裁量で決めます。このことから、賞与支給日にはすでに退職した従業員に支払いを無しにすると決めていれば、賞与の請求がされてもそれに応じる必要はありません。
もし、支給日在籍要件を定めていない場合は、退職者が賞与を請求することが可能である過去の裁判例があります。賞与が恩恵的なだけのものではなく、対象の期間内の労務に関する賃金の一種として支給されてきたことを指摘し、下記のように示しました。
「ビクター計算機事件―1978.3.22―東京地裁:これを別異に解すべき就業規則等の規定あるいは確立した慣行の存在しないかぎり、従業員はその支給対象期間の全部を勤務しなくとも、またその支給日に従業員たる身分を失っていたとしても、原則として支給対象期間中勤務した期間の割合に応じて賞与の支給を受けるものと解するのが相当である」
前もって支給日在籍要件を就業規則に入れ、賞与の支給対象者を明らかにし、会社の業績などが悪化する状況などで賞与の支払いは行われないなどの内容に関しても定めておくことがポイントです。