A.給与所得者の特定支出控除というのは、給与所得者が特定支出を行った場合において、その年の特定支出の額を合算した額が、その年中の給与等の収入金額が1,500万円以下ならその年中の給与所得控除額の50%を超過するとき、その年中の給与等の収入金額が1,500万円を上回るなら125万円を超過するとき、確定申告でその超過する部分の金額を給与所得控除後の所得金額より差し引くことができるという制度のことです。
1.特定支出
上記の特定支出というのは、給与所得者が支出する次の六つの支出のうちで一定のもののことです。
ちなみに、これらの六つの特定支出は、給与の支払者が証明したものに限定されます。そして、給与の支払者より補てんされる部分がある場合に、かつその補てんされる部分に所得税が課されていないときには、その補てんされる部分は特定支出より除外されます。
(1)職務に直接必要である技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出(研修費)
(2)職務に直接必要である資格を取得するための支出(資格取得費。なお平成25年分以降は、公認会計士、税理士、弁護士等の資格取得費も特定支出の対象とされています。)
(3)一般の通勤者として通常必要であると判断される通勤のための支出(通勤費)
(4)転勤に伴う転居のために通常必要であると判断される支出(転居費)
(5)単身赴任等の場合で、その者の勤務地か居所と自宅の間の旅行のために通常必要である支出(帰宅旅費)
(6)次の支出(その支出の額を合算した額が65万円を上回る場合は、65万円までの支出に限定されます)で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要であるものとして給与等の支払者より証明されたもの(勤務必要経費。平成25年分以降、特定支出の対象とされています。)
・書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関わりのあるものを購入するための費用(図書費)
・接待費、交際費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関わりのある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出(交際費等)
・制服、作業服、事務服その他の勤務場所で着用する必要のある衣服を購入するための費用(衣服費)
2.適用を受けるための手続き
この特定支出控除を受けるには、確定申告を行わなければなりません。
確定申告に当たり、特定支出に関する明細書と給与の支払者の証明書を申告書に添えるほか、搭乗・乗車・乗船に関する証明書や支出した金額を証明する書類を申告書に添えるか申告書の提出時に提示することが必要です。
そして、申告書には上記の書類に加えて給与所得の源泉徴収票も添える必要があります。