A.自身や自身と生計を一にする配偶者やその他親族のために医療費を払った場合において一定額の所得控除を受けられることを、医療費控除といいます。
歯の治療は、高額な材料を用いることがあったり、保険の使えないいわゆる自由診療となることがあったりします。したがって、相当高額な治療費がかかる場合がありますが、そのような場合には一般的に支出される水準を著しく上回ると判断される特殊なものは医療費控除の対象とはされません。ポーセレンや金は現在歯の治療材料として一般的に用いられていますので、それらを用いた治療の対価は医療費控除の対象とされています。
また、発育中の子供の成長を妨げないようにするために施す不正咬合の歯列矯正のように、歯列矯正の目的や矯正を受ける者の年齢等より歯列矯正を要すると判断される場合における費用は、医療費控除の対象とされます。一方、歯列矯正であっても、容ぼうを美しくするための費用は医療費控除の対象になりません。
なお、治療のための通院費も医療費控除の対象とされます。幼い子供の通院に付添いを要する場合等には、付添人の交通費も通院費に該当します。通院費については、診察券等によって通院した日を確認できるようにしておくほか、金額も記録しておくことが重要です。通院費と判断されるのは、交通機関等を活用した際の人的役務の提供の対価ですので、自家用車によって通院した際の駐車場代やガソリン代等は、医療費控除の対象とはされません。
1.歯科ローンで払う歯の治療費
患者が払うべき治療費の立替払いを信販会社が行い、その立替分を患者が分割によって信販会社に返済していくものを、歯科ローンといいます。信販会社が立替払いを行った金額は、その患者のその立替払いを行った年(歯科ローン契約の成立時)の医療費控除の対象とされます。
ちなみに、歯科ローンを活用した場合、歯科医の領収書が患者の手元にないと思われます。そうであれば、医療費控除を受ける際の添付書類として、歯科ローンの契約書の写しや信販会社の領収書を準備する必要があります。
なお、金利や手数料に当たる分は医療費控除の対象とはされないことに、留意しなければなりません。
2.適用を受ける場合における注意事項
医療費控除を受ける場合において注意すべき事項は、次の通りです。
・健康保険組合等より補てんされる金額が存在する場合、その補てんの対象となる医療費より控除しなければなりません。
・治療している間に年が変わる場合、各年に払った医療費の額が、各年分の医療費控除の対象とされます。