労務管理について

従業員から個人情報を取得した場合、その利用目的を通知する必要はありますか?

従業員本人が確認可能な状況で、内容が本人に認識される合理的かつ適切な方法により、その利用目的を通知する必要があります。

個人情報保護法第18条第1項・第2項では、次のように規定されています。
○個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。
○個人情報取扱事業者は、前項の規定にかかわらず、本人との間で契約を締結することに伴って契約書その他の書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。以下この項において同じ)に記載された当該本人の個人情報を取得する場合その他本人から直接書面に記載された当該本人の個人情報を取得する場合は、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならない。ただし、人の生命、身体又は財産の保護のために緊急に必要がある場合は、この限りでない。

 上記規定について、厚生労働省「雇用管理分野における個人情報保護に関するガイドライン:事例集」の「1.定義規定に関する事例」や経済産業省「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」の2-1-7~2-1-9には、おおむね次のように記されています。

1.厚生労働省
(1)「本人に通知」とは
〔適切に「本人に通知」している事例〕
 ○本人であると確認できていることを前提として、電話で口頭で知らせること
  ○面談で、口頭で伝達すること又はチラシ等の文書を渡すこと
 ○退職者等で遠隔地に在住する人に対して、文書を郵送等により送付すること、又はFAXや電子メール等のうち本人が常時用いる媒体で送信すること
 〔適切に「本人に通知」しているとはいえない事例〕
○本人であると確認できていない状況で、電話で口頭で知らせること
○現住所が正確に把握できていない人に対して、文書を郵送等により送付し、無事に届いたかについて事後的な確認および必要な対応をしないこと
○電子メールを常時用いる人以外の人に対して、電子メールを送信すること
 (2)「公表」とは
  〔適切に「公表」している事例〕
  ○従業員に対する回覧板への現従業員に関する雇用管理情報の利用目的の掲載
  ○従業員が定期的に見ると想定される事務所内における掲示板への掲載
  ○パンフレット・社内報等の配布
  ○会社のホームページのうちアクセスが容易な場所への掲載
 
平成24年5月(平成27年11月改正) 厚生労働省「雇用管理分野における個人情報保護に関するガイドライン:事例集」を基に作成

2.経済産業省
 (1)「本人に通知」とは
  「本人に通知」というのは、本人に直接知らしめることであり、事業の性質及び個人情報の取扱状況に応じ、内容が本人に認識される合理的かつ適切な方法による必要がある。
〔本人への通知に該当する事例〕
  ○電話では、口頭又は自動応答装置等により知らせること
○面談では、口頭又はチラシ等の文書を渡すこと
○遠隔地間では、電子メール、FAX等により送信すること、又は文書を郵便等により送付すること
○電話勧誘販売で、勧誘の電話で口頭の方法によること
○電子商取引で、取引の確認をするための自動応答の電子メールに記して送信すること
(2)「公表」とは
 「公表」というのは、広く一般に自己の意思を知らせること(国民一般その他不特定多数の人々が知ることのできるように発表すること)である。ただし、公表に当たり、事業の性質及び個人情報の取扱状況に応じ、合理的かつ適切な方法による必要がある。
 特に、雇用管理情報は、機微に触れる情報を含むので、事業者は、自らの置かれた状況に応じ、労働者等に内容が確実に伝わる媒体を選択する等の配慮を行う。
〔公表に当たる事例〕
○自社のWeb画面中のトップページから1回程度の操作により到達できる場所への掲載、自社の店舗・事務所内におけるポスター等の掲示、パンフレット等の備置き・配布等
○店舗販売では、店舗の見やすい場所への掲示
○通信販売では、通信販売用のパンフレット等への記載
(3)「本人に対し、その利用目的を明示」とは
 「本人に対し、その利用目的を明示」というのは、本人に対してその利用目的を明確に示すことであり、事業の性質及び個人情報の取扱状況に応じ、内容が本人に認識される合理的かつ適切な方法による必要がある。
 〔利用目的の明示に当たる事例〕
○利用目的を明記した契約書その他の書面を相手方である本人に手渡し、又は送付すること(契約約款又は利用条件等の書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む)中に利用目的条項を記す場合には、例えば、裏面約款に利用目的が記されていることを伝える、又は裏面約款等に記されている利用目的条項を表面にも記述する等、本人が実際に利用目的を目にできるよう留意しなければならない。)
○ネットワーク上では、本人がアクセスした自社のWeb画面上、又は本人の端末装置上にその利用目的を明記すること(ネットワーク上で個人情報を取得する場合には、本人が送信ボタン等をクリックする前等にその利用目的(利用目的の内容が示された画面に1回程度の操作によりページ遷移するよう設定したリンクやボタンを含む)が本人の目にとまるよう、その配置に留意しなければならない。)

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