マイナンバーが付番されても、必ずしも法人が扱う事務であるとは限りません。その書類の申請者や利用目的を確認し、法人が個人番号関係事務実施者に当たらない書類であれば、目的外利用とならないよう、預からないようにする必要があります。
労災保険給付について、考えてみましょう。
手続の大まかな流れは次のとおりです。
1.療養の給付請求書
被災労働者が指定病院等で診察を受け、請求書に事業主の証明を受ける。
→被災労働者が指定病院等に請求書を提出する。
→指定病院等が都道府県労働局を経由して労働基準監督署に請求書を提出する。
→厚生労働省が指定病院等に支払いを行う。
2.療養の費用・休業(補償)給付・障害(補償)給付・遺族(補償)給付・葬祭料(葬祭給付)・介護(補償)給付の各請求書
被災労働者又は遺族が請求書に事業主・医療機関の証明を受ける。医療機関の診断書等を受領する。
→被災労働者又は遺族が労働基準監督署に請求書を提出する。
→厚生労働省又は労働基準監督署が被災労働者又は遺族に支給決定通知・支払いを行う。
3.二次健康診断等給付請求書
労働者が請求書に事業主の証明を受ける。
→労働者が健診給付病院等で二次健康診断等を受診する。健診給付病院等に請求書を提出する。
→健診給付病院等が労働者に二次健康診断等の結果を伝え、都道府県労働局に請求書を提出する。
→厚生労働省が健診給付病院等に支払いを行う。
平成28年3月 厚生労働省「労災保険給付の概要」を基に作成
マイナンバーの付番は、療養の給付請求書については行われませんが、年金給付については付番されます。とはいえ、労災はいずれも本人申請であり、法人は証明しているだけです。よって、法人は個人番号関係事務実施者に当たりません。労災の書類の写しを保管する際には、マイナンバーを復元不可能なほどにマスキングするか、マイナンバーを記さないようにすることが重要です。
平成27年9月30日「内閣官房との質疑応答」が参考になります。その内容は、おおむね次のとおりです。
労災保険につき、マイナンバーは療養の給付請求書には付番されませんが、年金給付には付番されると伺っています。ただし、療養の費用・休業(補償)給付・遺族(補償)給付のいずれも本人か遺族の申請であり、会社(事業主)は請求書に証明するという立場です。そして、雇用保険は事業主負担と労働者負担で納めており、従業員個別の届けを要し、雇用保険被保険者資格取得届にマイナンバーの記載欄が設けられています。しかし、労災保険は事業者が全額を負担して1年分の賃金総額に保険料率を乗じた金額を納めており、従業員個別の届けは不要です。
このような理由で、労災保険に関して個人番号関係事務実施者は会社ではなく従業員本人であり、労災保険届出事務や労災保険申請・請求事務、労災保険証明書作成事務は会社のマイナンバーの利用目的に含めなくてよいと考えます。このような認識に誤りはないでしょうか?
→そのとおりです。従業員本人が労働基準監督署に労災保険給付の請求を行いますので、事業主が従業員の労災保険給付の請求につきマイナンバーを取得することはないといえます。ただし、従業員の代理人として事業主が労災保険給付を請求する場合があり、その際には事業主は代理人として従業員のマイナンバーを取り扱います。
労災保険については、従業員は保険料を負担しないため、保険料の徴収に該当し、事業主が従業員のマイナンバーを取り扱うことはないといえます。