5万円以下であっても税務署への提出を行う場合にはマイナンバーを記さなければなりませんが、税務署への提出を行わないことを前提に本人に対して写しを交付するために用いるためである場合にはマイナンバーの提出を求めなくても構いません。
報酬・不動産使用料等の支払調書については、税法上、本人に対して交付する義務はないといえます。本人に対する交付義務を負わない文書にマイナンバーを記して提供する場合には、マイナンバー法における提供制限が適用され、同法に反することから、留意しなければなりません。
文書を扱う法律において控えや写しを本人に交付する義務があるのかを確認した上で、対応することが重要です。
平成27年9月30日「内閣官房との質疑応答」が参考になります。その内容は、おおむね次のとおりです。
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書の写しを本人に送付することについては、個人情報保護委員会ホームページ「マイナンバーについて ガイドライン Q&A(回答) Q5-8-2」に、本人のマイナンバーを含めて全てのマイナンバーを記さない措置や復元できない程度のマスキングをすれば、マイナンバー法上の提供制限の適用を受けない旨が記されています。その年中の同一人に対する支払金額が合計5万円以下である講演等の謝金に係る支払調書は、税務署に提出する必要はないと法令により規定されています。マイナンバー保管の負担を考慮した上で、その年中の同一人に対する支払金額が合計5万円以下である支払調書を税務署に提出しないこととした場合において、確定申告の確認などのため、支払調書の写しを本人に送付することは認められるでしょうか?
税務署への提出を行わないことからマイナンバーを取得していませんので、支払者のマイナンバーを記さず、支払いを受ける者のマイナンバー欄は空欄としています。支払調書として税務署に提出しない書類の写しを本人に送付することとなります。国税庁ホームページ「社会保障・税番号制度<マイナンバー>について 社会保障税番号制度<マイナンバー>FAQ 法定調書に関するFAQ Q1-1」に、税法上、本人に対して交付する義務を負わない法定調書について、支払内容の確認などのために本人に対して写しを交付する行為は、マイナンバー法上の特定個人情報の提供制限を受けることとなるため、本人及び支払者等のマイナンバーを記すことはできない旨が記されています。
上記の個人情報保護委員会のマイナンバーガイドラインQ5-8-2は、このことに対して具体的方法を示唆しているものと考えられますが、税務署への提出を行うことが前提となっています。税務署への提出を行わないものの、これまでどおりに今後も支払調書の写しを本人に確認のため送付するという行為に問題はあるでしょうか?
→税法上、本人に対する交付義務を負わない法定調書について、その写しを本人に送付する行為は、税務署への提出の要否とは無関係に、個人番号関係事務には当たらないといえます。したがって、支払額等を記したものを本人に交付するに当たって、マイナンバーを記すことは認められません。
これまでどおり、支払額等を確認するため、マイナンバーを記さず支払調書に準じた形で支払額等を記したものを本人に対して交付することは、マイナンバー法上問題ないものと解されます。
また、個人情報保護委員会ホームページ「マイナンバーについて ガイドライン Q&A(回答) Q5-8及びQ5-8-2」には、おおむね次のように記されています。
○支払調書等の写しを本人に対して送付することは可能でしょうか?
→個人情報保護法第25条に基づき開示の求めを行った本人に対して開示を行う場合には、支払調書等の写しを本人に送付することが可能です。その際の開示の求めを受け付ける方法については、書面による方法だけでなく、口頭による方法等を規定することも選択肢に含まれます。なお、その支払調書等の写しに本人以外のマイナンバーが含まれているのであれば、本人以外のマイナンバーを記さない措置や復元できない程にマスキングする等の工夫をしなければなりません。
○マイナンバーを記さない場合は、支払調書等の写しを本人に送付することは可能でしょうか?
→本人のマイナンバーを含めて全てのマイナンバーを記さない措置や復元できない程にマスキングする場合には、マイナンバー法上の提供制限の適用を受けませんので、個人情報保護法第25条に基づく開示の求めによることなく、支払調書等の写しを本人に送付することができます。(平成27年4月追加)
さらに、国税庁ホームページ「社会保障・税番号制度<マイナンバー>について 社会保障税番号制度<マイナンバー>FAQ 法定調書に関するFAQ Q2-1及びQ1-1」には、おおむね次のように記されています。
○給与所得の源泉徴収票は、どのように変更されるでしょうか?
→給与所得の源泉徴収票については、平成28年1月1日以降に支払うべき給与等に係るものより様式が変更され、給与等の支払いを受ける者のマイナンバー、控除対象配偶者の氏名及びマイナンバー)、控除対象扶養親族の氏名及びマイナンバー、給与等の支払いをする者の法人番号又はマイナンバーを記載しなければなりません。ただし、本人に交付する給与所得の源泉徴収票については、法人番号又はマイナンバーを記すことは不要です。
また、このような変更に伴い、給与所得の源泉徴収票の様式がA6サイズよりA5サイズに変更されました。
※更新理由については、次のとおりです。当初、従業員に対して交付する源泉徴収票等には、その従業員のマイナンバーを記すこととされていましたが、平成27年10月2日に所得税法施行規則等が改正され、企業の従業員など給与の支払いを受ける者に交付する源泉徴収票などにマイナンバーを記す必要がなくなりましたので、内容を更新しました。詳細については、「本人へ交付する源泉徴収票や支払通知書等への個人番号の記載不要について」に記載されています。
○本人に対して交付する源泉徴収票や支払調書に、マイナンバーを記してよいでしょうか?
→税法上、本人に交付する義務を負う源泉徴収票や支払通知書等には、マイナンバー(給与所得の源泉徴収票及び退職所得の源泉徴収票については、支払者の法人番号を含む)を記しません。
なお、税法上、本人に交付する義務を負わない法定調書についても、支払内容の確認などのために本人に写しを交付するような行為は、マイナンバー法上の特定個人情報の提供制限を受けますので、本人及び支払者等のマイナンバーを記すことは不可能です。
ただし、個人情報保護法25条に基づく開示請求による場合等には、交付を受ける本人のマイナンバーに限り提供できる旨が、個人情報保護委員会ホームページ「マイナンバーについて ガイドライン Q&A(回答) Q5-7及びQ5-8」に記されています。
※更新理由については、次のとおりです。当初、従業員に対して交付する源泉徴収票等には、その従業員のマイナンバーを記すこととされていましたが、平成27年10月2日に所得税法施行規則等が改正され、企業の従業員など給与の支払いを受ける者に交付する源泉徴収票などにマイナンバーを記さないこととされましたので、内容を更新しました。詳細については、「本人へ交付する源泉徴収票や支払通知書等への個人番号の記載不要について」に記載されています。
本人に対して交付する源泉徴収票や支払通知書等へのマイナンバーの記載不要について、国税庁「法定調書提出義務者・源泉徴収義務者の方へのお知らせ」には、おおむね次のように記されています。
1.改正の概要
平成27年10月2日に所得税法施行規則等が改正され、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(以下「マイナンバー法」といいます)施行後の平成28年1月以降も、給与などの支払いを受ける者に対して交付する源泉徴収票などにはマイナンバーを記さないこととなりました。
なお、税務署に提出する源泉徴収票などについては、マイナンバーを記さなければなりませんので、留意が必要です。
※改正前は、支払いを受ける者に交付する源泉徴収票などにつき、本人等のマイナンバーを記して交付する必要がありました。
マイナンバーが記載不要となった税務関係書類は、次のものです。(給与などの支払いを受ける者に対して交付するもののみです。)
○給与所得の源泉徴収票
○退職所得の源泉徴収票
○公的年金等の源泉徴収票
○配当等とみなす金額に関する支払通知書
○オープン型証券投資信託収益の分配の支払通知書
○上場株式配当等の支払に関する通知書
○特定口座年間取引報告書
○未成年者口座年間取引報告書
○特定割引債の償還金の支払通知書
なお、電子申告・納税等開始(変更等)届出書についてもマイナンバーを記す必要はありません。
2.改正に関するQ&A
○なぜ従業員に対して交付する源泉徴収票にマイナンバーを記さないこととされたのでしょうか?
→本人交付が義務とされている源泉徴収票などにマイナンバーを記すことで、その交付時に個人情報の漏えい又は滅失等の防止のための措置を取らなければならなくなり、それ以前と比較してコストがかかることや、郵便事故等による情報流出のリスクが大きくなるといった声に配慮して、そのように改正されました。
○改正により、従業員に周知すべき事項はあるでしょうか?
→従業員に交付する源泉徴収票にマイナンバーは記されませんので、マイナンバー法施行後も、扱いはそれまでと同様であることを伝えてください。
○税務署提出用の源泉徴収票や支払調書などにも、マイナンバーを記さないこととなるでしょうか?
→今回の改正は、支払いを受ける者に交付する源泉徴収票や支払通知書などにつき、マイナンバーの記載が不要となるものであって、税務署提出用には支払いを受ける者のマイナンバーを記した上で税務署に提出することが必要です。
なお、支払いを受ける者よりマイナンバーの提供を受ける場合、マイナンバー法等に規定されている本人確認をしなければなりません。