事業用の資産を買い換えた場合における特例を適用可能であれば、土地の譲渡益の一部についての税金を将来に繰り延べることが可能です。
【解説】
1、事業用資産の買換えの特例とは
個人が事業の用として所有する特定の地域内に属している土地及び建物を譲渡した上で、その後に一定の期間内に特定の地域に所属する土地及び建物などを手に入れて、その購入した資産を手に入れた後1年以内に事業の資産という名目で運用を行った場合には、譲渡がなされた資産の譲渡益の中の一部分の税金に関して繰延できる制度のことです。
2、1号買換え
現在、この特例につきましては、譲渡する資産と購入する資産との組み合わせに応じて、 10の特例が規定されています。ご質問のような場合におきましては、1号買替えの適用可能に思われます。この1号買替えは買い替え特例の中でも代表的な特例の1つです。
この特例に関しては、譲渡する資産と購入する資産とが次に挙げる条件と合致することで適用可能となります。
(譲渡する資産)
既成市街地等の内にある事務所また事業所として使用されている建物またはその敷地の土地
譲渡された年の1月1日現在で、所有していた期間が10年を超えるもの
(購入する資産)
既成市街地等の外にある事業の土地もしくは建物、構築物、機械装置
ご質問の場合に関しては、売却する土地は東京23区内に属していますので、既成市街地等に当たります。妻の実家である地方都市が既成市街地などの外に当たっており、その区域の中において印刷工場ということで利用する土地や建物として購入する場合であれば、東京の土地や建物などの売却によって生じる譲渡益の一部に関して、課税を繰延べすることが可能です。
3、既成市街地等とは
以下に挙げる区域を指していいます。
①首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地
②近畿圏整備法第2条第3項に規定する既成都市区域
③首都圏や近畿圏または中部圏の近郊整備地帯等の整備を目的とした国の財政上での特別措置に関する法律施行令別表に掲げる区域
4、判定の時期
譲渡もしくは購入した土地が、上記した地域または区域に該当するか否かの判断につきましては、その土地諸々の譲渡がなされた時または取得した時の現況によるものと定められています。従って、1号買換えの適用を希望するのであれば、譲渡や購入の直前段階において、当該する資産の所在する各市町村に対し、上記した地域に該当するか否かの確認することが大事となります。取得した時には既成市街地の外であったが、後から既成市街地の中に取り込まれたという場合においても適用することは可能です。
5、課税の対象とされる譲渡所得の計算
(1)売却代金以上の事業用資産を購入した場合
①収入金額 売却金額×20%
②必要経費 (売却した資産の購入代金+譲渡にかかる費用)×20%
③譲渡所得の金額 ①-②が税金の対象になります。
例えば今回の質問のような場合においては土地・建物を5,000万円で売却(譲渡費用は500万円)、6,000万円の土地や建物を購入した場合には
①収入金額 5,000万円×20%=1,000万円
②必要経費 5,000万円×5%=250万円
(相続で取得したことから、取得価額が不明確なので概算取得費を適用)
(必要経費250万円+譲渡費用500万円)×20%=150万円
③譲渡所得の金額 ①-②=850万円が税金の対象となります。
(2)売却代金未満の事業用資産を購入した場合
①収入金額
(売却金額-買換資産の購入代金)+買換資産の購入代金×20%
②必要経費
(売却した資産の購入代金+譲渡にかかる費用)×上記÷①売却金額
③譲渡所得の金額 ①-②が税金の対象になります。
例えば今回の質問の場合には、土地や建物を5,000万円で売却(譲渡費用は500万円)、3,000万円の土地や建物を購入した場合
①収入金額 5,000万円-3,000万円=2,000万円
3,000万円×20%=600万円
2,000万円+600万円=2,600万円
②必要経費 250万円+500万円=750万円
2,600万円÷5,000万円=0,52
750万円×0,52=390万円
③譲渡所得の金額 ①-②=2,210万円が税金の対象になります。